本校の建学の精神は、世界的視野で主体的に考え、行動する人間の育成、つまり「世界を舞台に堂々と自分の意志で立ち、そして行動できる人を育てる」であります。創立者の辻本光楠先生は、明治30年に15歳で単身アメリカ・サンフランシスコへ渡られました。当時、先生は学校で、欧米文化を取り入れた日本人が新大陸でアメリカ人と対等に渡り合っているとの話を聞かされていました。そこで自分の目で、日本人が新大陸で活躍をしている姿を見てみたいとお思いになり、ご両親の反対を押し切って渡米なさったのです。
早速、先生は昼間はサンフランシスコ郊外のブドウ畑で働き、夜は英語学校へ行き勉学に励まれました。ところが現地での日本人の姿は、先生が想像していたような勇姿ではありませんでした。ブドウ畑で働く日本人はアメリカ人の前で、言葉が通じず、ただただおどおどとしながら、奴隷の如く何も言えずに働かされていたのです。その様子を見て、先生は大いに失望されました。そこで、先生は、次の時代を担う日本の若者に、世界のどの舞台に立っても堂々と自分の意志で行動できる人になってもらいたい、という熱い思いで1925年大正14年に京都商業学校として、教職員6名、生徒25名で本校を創立されました。大正から昭和の長年にわたり、商業教育で成果を上げた本校は、1990年平成2年に全日制普通科高校の進学校として、校名を京都学園高等学校とし、新たな歴史を進めることとなりました。また、2000年平成12年には念願であった中学校を併設し、中高一貫教育に努めてまいりました。これまで建学の精神を具現化するために、授業、部活動とともに長期留学や海外研修をはじめとする数多くの行事を通して、ひとり一人の適性を見抜き、そしてコース制に基づき、ひとり一人の適性を伸ばす教育に努めてまいりました。そして、創立96周年に当たる今年、京都先端科学大学の先生方、そして産業界の皆様との連携をより一層強め、新たな教育創造に挑む学校法人永守学園京都先端科学大学附属中学校附属高等学校として、新たな歴史を歩み始めています。
本校はこれまでに約3万5千人の同窓生がこのグローバル社会の中、世界中で多方面の分野で活躍しています。同窓生の皆さんのご活躍こそが本校教育の証です。
本校は4年後の2025年に創立100周年を迎えます。そこで、この度、本校の新たな歩みとともに創立100周年記念の徽章として『智なる象』を芸術科の米田実先生が制作してくださいました。生徒の皆さんに贈呈いたします。この記念の徽章の象は、学業の成功をもたらす智のシンボルとしてモチーフにされています。また、日本の伝統文化の折り紙をイメージし、本校が掲げる9つの方針を踏まえ、9つの色をデザインに取り入れられています。全員がこの徽章を着用し、スクールアイデンティティー確立の想いを込めて制作にあたっていただきました。明日12日のホームルームで担任の先生からひとり一人にお渡しいただきます。本校の生徒の皆さんと教職員全員がジャケットに着用し、本校の誇り高き一人として自覚し、社会の範となる行動に努めましょう。
結びにあたり、本校教育に対する信念を全員が心に刻み、改めてひとり一人がこの世界の人々の幸福を願い、周りの人々を敬い理解し、自分自身がこの世界を発展させる主人公として『世界のどの舞台に立っても堂々と自分の意志で行動する人として生きる』、この建学の精神を皆様と共に心したく思います。
厳しい状況の中ではありますが、私たちは、この状況を正しく受け止め、規律を守り、互いに協力し、これからも皆様と共に創立100周年に向け、生徒の皆さんにとって充実した学校生活が送れる学校づくりに努めて参りますことをお誓い申し上げ式辞といたします。
2021年5月11日
学校法人 永守学園
京都先端科学大学附属中学校高等学校
学校長 佐々井 宏平